1920年代当時、国際返信切手券(International Reply Coupon、IRC)の値段(価値)は、各国間でばらつきがあったそうだ。 貿易関係の雑誌発刊を目論んでいたチャールズ・ポンジがあるスペイン人に協力要請の手紙を書いたところ、返信には、雑誌の見本を送って欲しいと言う事で、国際返信切手クーポンが同封されていた。 郵便局で返信切手券(クーポン)をアメリカの切手と交換したところ、スペインで1セント程度の価値のクーポンが、1セント切手6枚と交換できた。 そこで、ポンジは国際返信切手券の仕組みを利用した投資スキームを作って投資を募り、米国ニューイングランド地方の住民数千人から金を集めた。 米証券取引委員会(SEC)によると、銀行の預金利息が5%だった当時、90日で40%の利回りが得られるという触れ込みだったという。
ポンジスキームをネズミ講と訳すこともあるようだが正しくない。両者の似ている点は、出資金に対する配当原資が(投資収益、事業収益ではなく)出資者の出資金であるということだが、ポンジスキームにあっては、ネズミ講のような子ネズミを勧誘してピラミット階層をつくることはない。 似たものとして、米国では、ピラミッド階層を持つ販売スキームとしてピラミッドスキームあるが、こちらは一応、商品は介在するが、流通実態がないものをさして、禁止されているようだ。商品の流通実態があれば(認められていれば)MLM(マルチレベルマーケッティング/マルチ商法)ということになろうか。 ネズミ講(無限連鎖講)にあっては、親ネズミに下に子ネズミ、子ネズミの下に孫ネズミが延々と(ピラミット階層で)連なり、配当原資は子孫ネズミの出資である。無限に子孫ネズミを勧誘しつづけられれば、永久に配当を受けられるが、早晩、勧誘対象者(カモ)はいなくなり、破綻は目に見えている。 ポンジスキームでは、高配当を謳って出資者を募るが、ピラミット階層はなく(子ネズミを勧誘することはなく)、出資者から資金を集める。 集めた出資金は、ほとんどまともな投資活動、事業活動にあてることなく、いわばドンブリ勘定のドンブリに入れる。出資者への配当は、投資収益、事業収益からではなく、出資者の出資金から払われる。 出資者(出資金)が増えつづけるかぎりは、あるいは、当局の査察によって実態が明るみにでないかぎりは、この自転車操業は回っていく。 不況による出資元金の引き上げ、あるいは高配当への疑念の高まり、そして当局の査察によって、この自転車操業(ポンジスキーム)は回っていかなくなり、ついには止まってしまう。 ネズミ講、ポンジスキーム、それぞれ様々なヴァリエーションがあるだろうが、チャールズポンジによるオリジナルなポンジスキームでは、実際に国際郵便切手の購入に充てられたのは、当初のたった30ドル。史上最大の投資詐欺と世界を騒がせたバーナード・マドフにあっては、1993年以来、1ドルの投資も行われていなかったそうだ。 参考: マドフ事件に新事実:やはり詐欺師は詐欺師だった。 | INTELOGUE
チャールズ・ポンジ [ Charles A. Ponzi ] 年表 |
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1882/03/03 |
チャールズ・ポンジ(イタリア名はCarlo Ponzi)は、イタリアのパルマ(Parma)にて生誕とBiographyに記されているが、眉唾という説もある。パルマの裕福な家庭に育ったというのは、ポンジ自身がニューヨークタイムズに語ったことが元になったようだが、虚飾に塗れたポンジの人生、出生までも偽っていたようだ。
実のところは、イタリアのルーゴ(Lugo)生まれのカルロ・ピエトロ・ジョヴァンニ・グリェルモ・テバルド・ポンツィ(Carlo Pietro Giovanni Guglielmo Tebaldo Ponzi)が、アメリカに渡り、チャールズ・ポンジ(他に様々な名前を使っていたが)と名乗っていたということらしい。 |
1903/11/ | 21歳の時にアメリカに移民。まずボストンに行き、その後はニューヨークと、 アメリカ各地を転々としながら、皿洗い、店員、ウェイター、イタリア語通訳などをしていたらしい。 |
1908/ | (後に公表されたことだが) 詐欺罪(文書偽造)で20ヶ月間、カナダの刑務所に服役。 |
1910/ | (後に公表されたことだが) 5人のイタリア人をカナダからアメリカに密入国させたとして、2年の刑を受けていた。 |
1917/ | 放浪の末、ボストンで落ち着き、卸売業者にてタイピングの仕事に就く。 海外からの郵便への返信の仕事をしていたようだ。 |
1919 |
2年ほどは真面目に海外郵便物への返信タイプの仕事をしていたが、ある日、国際返信切手券を使った詐欺の手口を思いつき実行に移した。後にポンジスキームと名付けられるようになった詐欺を思いついたきっかけは、国際返信切手券(郵便返信切手クーポン)の国際間の価値のばらつきを知ったことにあった。
当時、Ponziは輸出に関する雑誌を発行しようと考えていたが、雑誌発行の協力者を探すため、あるスペインの紳士に手紙を書いた。その返事と一緒に、国際返信用切手券が送られてきた。 紳士は雑誌の見本が欲しかったので、返信用に国際返信用切手券を同封したのだった。 この間、ローズ・ニェッコ(Rose Gnecco)という女性と結婚。Gneccoの読みだが、イタリア人名の場合、ニェッコと読むらしい。 |
1919/12 |
ボストンのSchool Streetに「The Security Exchange Company」を設立。
投資者にたったの90日で50%の利益が出ると約束して資金を集める。 |
1920/07 |
大金を集めたポンジは、豪邸を購入するなど、贅沢を極めていたが、
The Boston Postという新聞に、Ponziのビジネスの合法性を疑問視する記事が掲載された。
その日の午後、裁判所から、会計監査委員の調べが終わるまで、新規の投資を受けつけてはいけない との命令が出された。 取り付け騒ぎが起こったが、素直に返金しているうちに、騒ぎは次第に納まったとか。 |
1920/08 | 取り付け騒ぎが小康状態のなか、ポンジは、新しいシステムの銀行だとか、Charles Ponzi Company という世界中の産業に投資する会社の構想まで練って、逃げ道を探していたようだ。しかし、新たに資金がはいってこないなか、ついに破産となる。 |
1920/11/ | 5年の懲役刑を言い渡され連邦刑務所に服役。 |
1925? |
服役を終えて出所後、また同じような詐欺事件を起こし、
今度は懲役9年を言い渡されたが、フロリダに逃亡。
フロリダでは、Charles Borelli と名乗って、当時の不動産バブルに乗じて詐欺を実行。 開発不可能な沼地を激安で購入して、23区画に分けたうえで、高く売りつけていたらしい。 不動産詐欺を当局にかぎつけられ、商船員として各地を転々と逃亡。 ついには、マサチューセッツ州でとらえられ、 1年間はフロリダ、7年間はボストンの刑務所で服役。 |
1934/ |
52歳の時にアメリカの市民権を失い、国外退去、イタリアに戻る。
1920年から1934年まで(逃亡していた期間を除き)ほとんどが刑務所暮らしだった。 |
1939/ |
その後、イタリア航空のブラジル・リオデジャネイロ・オフィスのマネージャーの職に就いたが・・・、
世界大戦が始まり、航空会社は潰れ、数年後に失業。
リオデジャネイロで、ロッジを始めたが、失敗。英語を教えたり、失業手当を貰い生活していた。 |
1949/01/18 | リオデジャネイロの慈善病院の病棟で貧困のうちに死亡(享年67歳)。 貧乏だったが、自分の葬式代、$75がちゃんと用意されていたらしい。 未完の「The Fall of Mister Ponzi」という原稿が残されていたそうだ。 |
Charles Ponzi >
Ponzi Scam
Biography
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